【実例あり】ふるさと納税の各シミュレーションを実践して、より正確な控除上限額を算出してみた

ふるさと納税を行う上で、最も気をつけるべきは住民税控除の上限額です。控除の上限を超えてしまうと、上限を超えた分は控除されず単なる寄付となってしまいます。
この控除上限額を把握する際に、各ふるさと納税サイトにシミュレーションができるページが用意されていますが、それぞれ若干入力項目が異なったり、控除上限額として出てくる結果が若干異なるようです。
本ページでは、私自身を例に、ふるさと納税の各シミュレーションを実際に利用してみました。
実際に控除上限額のバラツキや入力項目の差異などをみていただき、少しでも正確な金額を確認できるようにするための一助になればと思います。
(本記事は、令和2年1月時点の法律に基づいて執筆しております。)
ふるさと納税とは?

本題に入る前に、ふるさと納税に詳しくない方にむけて、少しご説明します。ふるさと納税について、よくご存じの方は読み飛ばしてください。
ふるさと納税の制度内容について
ふるさと納税とは、他の自治体に寄付し、寄付した金額分の住民税が控除される制度です。(申請方法によっては、所得税・住民税が控除対象)
本来住民税はご自身が住んでいる市区町村に支払いますが、当然人口が多い都心部に住民税が集中します。そうすると人口が少ない自治体では、十分な住民税が確保できず、財政が逼迫します。特に過疎化が進む自治体では、住民税という財源が確保しづらいという事は切実な問題となってきます。
そこで、ご自身が住む自治体以外の市区町村に寄付という形で納税する事で、財政が逼迫する自治体への財政を枯渇させないようにする目的で行われるのが「ふるさと納税」です。
但しふるさと納税を行う事で、本来ご自身が住民登録している自治体に納税するはずの住民税を、他の自治体に納税する事になるので、その点は考慮して行うべきです。
例えば横浜県の川崎市では、ふるさと納税により市税(住民税)の流失が深刻になっています。
(参考)川崎市ホームページ – ふるさと納税による市税の流出が深刻です
http://www.city.kawasaki.jp/230/page/0000109019.html
ふるさと納税を行う場合、寄付したい自治体や欲しい返礼品から選ぶことができます。返礼品は寄付した金額の30%相当以下の品物になります。
例えば、30,000円の返礼品は、その30%(9,000円)相当以下の物です。
ふるさと納税による控除金額には上限がある

ふるさと納税の住民税控除は、寄付金額から自己負担金2,000円を差し引いた金額になります。
例えば、10,000円の寄付をした場合、2,000円を差し引いた8,000円の寄付に対して、翌年度の住民税が控除されます。
しかし寄付をすれば、いくらでも住民税が控除されるという訳ではありません。控除される金額には上限があります。
上限を超えた金額については、自己負担金2,000円+超えた分の金額が控除されません。
例えば、40,000円分の寄付をした場合、自己負担金2,000円を差し引いた38,000円が住民税の控除対象となります。
しかし控除上限額が35,000円だった場合、超えた分の3,000円分は控除されないので文字通りの寄付になります。(厳密には少し異なりますが、大枠の説明上このように記載しております。)
但し寄付した40,000円の最大30%に当たる、12,000円相当の返礼品は受け取る事ができます。(返礼品を考慮すると多少控除上限額を超えても、損はないように捉えられます。)
このように、ふるさと納税自体はいくらでもできますが、ふるさと納税による税金の控除金額には上限があります。控除金額を超えてふるさと納税を行うと、超えた分は税額控除を受けられません。
この控除上限額を知るために、ふるさと納税サイトでは、控除上限額を算出するシミュレーションページを用意されています。
控除上限額を正確に算出するためには、ふるさと納税を行う年度の「源泉徴収票」と「住民税額決定通知書」が必要です。
住民税額決定通知書は6月に郵送されてきますが、源泉徴収票は12月後半になりますので、それまでは控除上限額を給与明細を基に、ざっくりとしか算出できません。
控除上限額を正確に把握し、上限いっぱいまで、ふるさと納税を行う場合は、源泉徴収票を貰ってすぐに上限額を算出し、12月末までにふるさと納税サイトから返礼品を選んで行う事になります。
ふるさと納税の返礼品には在庫がある
そこまで控除上限額にこだわらなければ、去年分の源泉徴収票や住民税額決定通知書を元に、概算の金額を出して、その範囲でふるさと納税を行うというのも一つの方法です。
というのも、返礼品にも在庫があるので、
あまり12月のギリギリになると、目当ての返礼品が在庫切れになるということもあります。
返礼品で目ぼしいものがあるのであれば、ある程度の控除上限額だけ確認し、返礼品の方を先に抑えてしまうという事も一つの考えた方です。
ふるさと納税の適応を受ける二つの税金控除方法

ふるさと納税した金額の控除を受けるには、「確定申告」をするか「ワンストップ特例」という制度を用います。詳しい方法については本ページでは割愛しますが、それぞれの違いについて、簡単に表にまとめておきます。
確定申告 | ワンストップ特例 | |
内容 | 他に確定申告をする必要がある場合、ふるさと納税分も同時に申告する事ができる。 | 5つの自治体までのふるさと納税による寄付に対して、確定申告なしに住民税の控除申請が可能。 |
利用条件 | 特に無いが、ワンストップ特例を申請した後に確定申告を行うとワンストップ特例の申請は無効となる。 | 確定申告を行わない方のみ利用可能 |
対象税 | 所得税が還付される。 住民税が控除される。 |
住民税の控除が控除される。 |
申し込み方法 | 管轄の税務署に申告。 | 下記の必要書類を、寄付を行った各自治体に郵送する。 |
必要書類 | ・申告書 ・本人確認書類 ・印鑑 ・口座番号 ・源泉徴収票など所得がわかるもの ・寄付金受領証明書 ・他にも控除がある場合はそれを証明できる書類(医療費控除や住宅ローン控除など) |
・ワンストップ特例申請書(寄付金税額控除に係る申告特例申請書) ・本人確認書類 ・返送用封筒と切手 |
申告期限 | 翌年2月16日~3月15日まで | 翌年1月10日まで |
※寄付金受領証明書の到着時期は、ふるさと納税を行った各自治体によって異なります。目安として、下記のページをご参照下さい。
(参考)寄付金受領証明書の発送目安について
https://www.satofull.jp/static/municipality_list/donation_certificate.php
確定申告とワンストップ特例はどちらがお得?
確定申告は所得税と住民税から控除されるのに対し、ワンストップ特例は住民税のみが控除対象という違いがありますが、最終的に控除される金額はどちらも同じです。
ただし住宅ローン控除や医療費控除を受けている場合は別で、それぞれ注意すべき点があります。
住宅ローン控除を受けている状態で、ふるさと納税分の確定申告を行った場合、まず、ふるさと納税寄付金額分を所得税から控除された後に、住宅ローン控除分の所得税が控除されます。
所得税で控除しきれなかった住宅ローン控除分は、住民税から控除されますが、住民税控除には上限があるため、それを超えてしまった金額分は自己負担となります。
しかしワンストップ特例を適応した場合、100%住民税から控除となるため、ふるさと納税による所得税の控除に影響を与えません。
また医療費控除を受ける場合、医療費控除も所得税・住民税それぞれが控除対象なので、住宅ローン控除を受けている場合と同様、控除上限額に影響を及ぼす可能性があります。
特に医療費控除を受ける時点で、確定申告が必須なためワンストップ特例は使えません。
詳細は下記のページで詳しく説明されているので、そちらを参照してください。
(参考)ふるさと納税との併用可?住宅ローン控除、医療費控除など各種控除との関係
https://www.satofull.jp/static/deduction02.php
実際にふるさと納税の各シミュレーションを行ってみた

シミュレーション結果にはバラツキがあるという事は、実践された方は既に周知の事と思いますが、まだ実際にシミュレーションをされていない方のために、実際の私の源泉徴収票と住民税額決定通知書を基に、シミュレーションを使ってみました。
条件は下記になります。
【地域】京都市在住
【家族構成】6人家族:私(世帯主・サラリーマン)、妻(専業主婦)、15歳未満の子ども2人、私の母と弟(共に23~69歳未満)
【令和元年の源泉徴収票】
- 支払い金額:5,962,134円
- 給与所得控除後の金額:4,228,000円
- 所得控除の額の合計額:2,514,941円
- 株式譲渡益:0円
- 社会保険料等の金額:912,941円
- 小規模企業共済等掛金の金額:0円
- 生命保険料の控除額:82,000円
- 地震保険料の控除額:0円
- 医療費控除の金額:0円
- 住宅借入金等特別控除額:0円
【住民税額決定通知書】
- 市民税・所得割額:115,600円
- 府民税・所得割額:77,100円
今回は7つのふるさと納税サイトのシミュレーションを使ってみました。
ふるさとチョイスの控除上限額の詳細シミュレーションで試算してみた結果
ふるさとチョイスのシミュレーションで上記金額を入力した結果、下記の控除上限額となりました。

https://www.furusato-tax.jp/about/simulation
ふるさとチョイスのシミュレーションは、住民税を入れる箇所がなく、あくまで源泉徴収の金額に基づいた試算になります。
ふるなびの控除上限額の詳細シミュレーションで試算してみた結果

https://furunavi.jp/deduction.aspx
ふるさとチョイスと早速、控除上限額が異なりました。
ふるなび の方は、ふるさとチョイスに比べて「株式譲渡益」「小規模企業共済等掛金の金額」「生命保険料の控除額」「住宅借入金等特別控除額」の入力項目がありませんでした。
私の例でいくと「生命保険料の控除額」を入力していないので、金額が異なったようです。
ちなみにふるさとチョイスの方で「生命保険料の控除額」の金額を0円にすると、ふるなびの金額とほぼ同じになりました。
さとふるの控除上限額の詳細シミュレーションで試算してみた結果

https://www.satofull.jp/static/calculation01.php
さとふるでは「市町村民税所得割」「都道府県民税所得割」という、住民税に関する入力項目がありました。
保険料に関する控除項目や、扶養・障碍者に関する項目がありませんでしたが、「給与所得控除後の金額」「所得控除額の合計額」がありますので、既に差し引いた金額がこの二つの入力がある事である程度カバーされています。
この金額は割と正確な控除上限額ではないかと考えられます。
ただ注意書きにもある通り「住宅借入金等特別控除額」がある場合は、寄付上限が正確に出せない場合があるようですので、注意が必要です。
ちなみに「市町村民税所得割」「都道府県民税所得割」は、税額控除前所得割額の金額を入力します。
わが街ふるさと納税の控除上限額の詳細シミュレーションで試算してみた結果

http://www.citydo.com/furusato/what/07.html
わが街ふるさと納税のシミュレーションは、「住宅借入金等特別控除額」の入力項目がありませんが、それ以外はさとふるとほぼ同じです。
少し違うのが、上限額を算出をした後に、自治体に寄附する金額を入力する事で、いくらまで自己負担額がかかるかをシミュレーションできる点です。

http://www.citydo.com/furusato/what/07.html
私の場合は、控除上限額は48,000円と出ましたが、
48,600円までは入力しても、自己負担額が2,000円のままでした。
48,600円を超えた金額を入れると、その差分で自己負担額が増えていきました。
総務省ふるさと納税ポータルサイトの控除上限額の詳細シミュレーションで試算してみた結果

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html
総務省のページ内ではシミュレーションができず、上記のページから、エクセルをダウンロードして入力する形式です。
したがってエクセルをお持ちでない方は、利用できません。
また給与収入と配偶者・扶養家族の人数を入力するだけの簡易的なものですので、詳細な控除上限額の算出はできないものと考えます。
ちなみに私の場合は、寄付金額47,291円までであれば、自己負担額が2,000円のまま寄付が可能と算出されました。
ふるまるの控除上限額の詳細シミュレーションで試算してみた結果

https://www.furumaru.jp/info/simulation_d.php
入力項目に関しては、細かく入力できるようになっていますが、特筆すべきは、「年金収入」と「事業所得」の入力欄があるところでしょうか。
これにより年金暮らしの方や個人事業主やサラリーマンでも、副業している方でも細かく入力が可能になります。
楽天市場の控除上限額の詳細シミュレーションで試算してみた結果

https://event.rakuten.co.jp/furusato/mypage/deduction-details/
楽天の場合は、実際にふるさと納税を実行した後でないと、控除上限額の計算がされないようです。
私は楽天市場でふるさと納税を行っていなかったので、いくら計算しても自己負担2,000円のまま変わりませんでした。
ふるさと納税の上限額を自分で算出する計算式

ふるさと納税サイトでシミュレーションをするのもいいですが、そもそも自分で計算するという方法もあります。
控除上限額は下記の計算式で求める事ができます。
(個人住民税所得割額×20%)÷{100%-(住民税10%)-(所得税率×復興税率)}+負担金2,000円
「個人税所得割額」は、住民税額決定通知書をご参照ください。市民税・府民税(県民税)と二つに分かれている場合は、各所得割額の合計がこれにあたります。
「住民税基本分」は、ほぼ全国一律10%ですが、地域によって稀に異なる場合があるようですので、正確な控除上限額を算出したい場合は、お住いの役所にご確認下さい。
「所得税率」を出すには、課税所得金額を求める必要があります。
課税所得金額は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」ー「所得控除の額の合計額」=あなたの本年度の課税所得金額になります。下記の所得税率表より、該当する税率を適応して下さい。
ちなみに私の場合は、課税所得金額が195万円以下になりますので、所得税率5%になります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
参照元:国税庁 – No.2260 所得税の税率
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
「復興税率」は、東日本大震災の災害復興税になり、所得税額の2.1%課税になります。
私自身を例にすると、下記の計算になります。
{(115,600円+77,100円)×20%}÷{100%-10%-(5%×1.021)}+2,000円
=47,397円が上限額になります。
私の場合は、総務省のエクセルのシミュレーションが最も近い金額になりました。
参照元:ふるさと納税の限度額の目安は?計算方法や目安表、住宅ローンを利用した時の注意点もあわせてまとめました
https://furusato.wowma.jp/media/1675/#i
参照元:総務省 – ふるさと納税のしくみ 税金の控除について
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html
参照元:「ふるさと納税」の仕組みと手続き
https://www.zeiken.co.jp/kakutei/furusatotax_naiyou.html
まとめ
実際にふるさと納税サイトが提供している各シミュレーションを実際に使い、シミュレーションを使わず、自身でも計算してみました。
シミュレーションは、サイトによって入力項目が違ったり、その結果算出される金額も違うので、あくまで参考程度に考えた方がいいという事がよくわかりました。(各サイトにもその旨記載されていますが…。)
ふるさと納税の正確な控除上限金額を知りたい場合は、ご自身で計算してみる事と、不安であれば市区町村の役所に「源泉徴収票」と「住民税確定通知書」を持っていき、計算してもらうのがいいかもしれません。
ご自身の計算と役所の職員さんの計算が合っていれば、計算間違いなく控除上限額が算出できていると思います。